詩を読んで好き勝手いう会 2020年の記録

 《第37回》

『夜にあやまってくれ鈴木春香

 

日時:2020年7月26日(日)

18:00~22:30

場所:浦和

 

 

 

コロナ禍の中で延期になっていましたが、感染対策に留意したうえで、実施しました。

なんといえばいいのか、現代短歌シーンの一部を見せてくれる作品でした。

チープな日常の吐露とのはざまの、ぎりぎりのところという印象でしょうか。

個人的には、あまり個人の生活史を特別視するのは好きではないですが、日常性や現実性の一瞬間を切り出してみせるというのも、おもしろいのかもしれません。

この作品は、この瞬間にあるのかもしれませんね。

池上個人としては、気負いすぎていてちょっとむずがゆかんじがするのですが、ふっと思う、私が思春期だったときにこの短歌にふれたら、きっと心の深くにしみたのではないだろうか、と。

青春の短歌、そういった瞬間なのかもしれません。

そういう意味では、青春の麻疹はかかっておくべきかもしれません。

抗体ができた大人も、ね。

 《第36回》

『志村正彦全詩集』志村正彦

 

日時:2020年2月9日(日)

17:30~21:30

場所:川口

 

今回は、詩人ではありません。歌の歌詞です。

2000年結成、2004年メジャーデビューのバンド、フジファブリックのボーカル志村正彦によるフジファブリックの楽曲の歌詞(詩)です。

フジファブリックが好きで聞いていたメンバー半分と、この詩の買いで初めてフジファブリックを知ったというメンバー半分の会となりました。

そしてフジファブリックを知っている人たちは、ほぼ全員『銀河』のPVを見て、聞くようになったという偶然の一致。

音楽を聴くと曲に引っ張られてしまうところもありますが、詩だけを読むと、妙に深読みしてしまったりして面白い回でした。

基本的には、好きな詩を紹介した後にその曲を聴くと、ギャップがあったり、逆に音楽的な表現が詩のイメージを膨らませているところがあったりと、新しい発見がありました。

基本的には、詩は妄想全開。

車窓から見える花屋の女の子にバーチャルで恋をする設定で、脳内で彼女と公園に行って遊んでしまう詩『花屋の娘』から始まりました。最初は違和感がありましたが、その感じに慣れていくと(あるいは、そういう妄想を思い出していくと)、青春の心にグッとくる詩たちでした。

『サボテンレコード』の、「でもね、だってね」が口癖の彼女を理解できないけれど、その感情の矛先を待っている、というのは秀逸。

『夜汽車』で、峠を越えたらあなたに伝える本当のことは、きっと言えないだろう(この関係は男女、だけでなく、親子かもなんて意見もありました)。

『茜色の夕日』の「東京の空の星は見えないと聞かされていたけど/見えないこともないんだな」というのは、いいですね、私たちをどうしようもない常識やいきがりが縛っていくが、素直に現実を表明するのがいいんじゃない、という気がします。

ただ、「そんなことを思っていたんだ」と、決定的な部分で、一歩引いて自分をまるで他人事のように相対化してしまうところに、現在の歌があるのかもしれません。

『若者のすべて』は、それが若者のすべてかい! と(池上は)突っ込みながら読んでました。が、中身はいいですね。

花火大会にいるかもしれない好きな女性に、偶然ばったり出会うことをあるかな~、ないよな~、でもな~、と思いながらセルフプロデュースして自己演出をしていく自意識って、若者っぽい!!

かゆい、かゆい、かゆいけど、身に覚えもあるね。

そう、志村正彦は高校時代のような毎日を描くことに秀逸だし、そういった風景の小さな何かのいろいろなパートに聞く人がそれぞれ、ちょっとずつ刺さっていく。

フジファブリックの魅力は、そういうところだったのかもしれません。